特集 キャッシュレス決済はどこに向かうのか

2020.06.30

ポイント還元事業を終え、これからの課題


先月30日をもって、2019年10月から続いていたキャッシュレス・ポイント還元事業が終わりを迎えた。それに先立ち、2020年6月23日、以下のアウトラインで「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」第二回検討会が開催された。

  1.  第一回検討会の振り返り

  2.  日本のキャッシュレス決済比率

  3.  決済事業者の中小店舗向け開示ガイドライン案について

  4.  国によるポイント還元事業データの開示の方向性について

本検討会は、ポイント還元事業の総括を行うとともに、キャッシュレス決済に関わる店舗や決済事業者、ネットワーク事業者等の観点を踏まえ、キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた課題や方策を検討するために設置されたもので、第二回検討会では第一回の議論の振り返りと、今後のキャッシュレス関連の環境整備について方針を決めるための議論がなされた。

 国内キャッシュレス支払額及び比率の推移のグラフから見て取れるように2010年以降、国内のキャッシュレス支払額は順調に伸長している。また、決済比率の内訳のグラフを見ても全媒体で増加が見られる。直近2019年の国内民間最終支出におけるキャッシュレス決済比率はというと、26.8%となっており、前年対比2.7%上昇した。キャッシュレス決済は、クレジット・デビット・電子マネー・QRコードに分類されるが、2019年はQRコード決済において、前年対比実に約6倍という大幅な増加が見られた。背景にはPayPayやLINEPayなどQRコード決済事業者による大規模なキャンペーンがあったが、今後そのような官民協同キャンペーンのない状況でQRコード決済がどのように市民権を獲得していくかは注目しておく必要があるだろう。

 キャッシュレス市場の拡大、消費押上げなどの効果があった今般のポイント還元事業は評価に値するが、同時にキャッシュレス市場のさらなる拡大に向け、今後取り組むべき課題も浮き彫りになった。キャッシュレス決済普及への鍵を握っているといえる中小店舗にとってネックとなるのは手数料・端末代金・入金までのタイムラグの「3つの壁」に集約される。これら「3つの壁」に対する中小店舗の不安を解消するために、手数料の見える化や引き下げ、タイムラグに資する銀行振込手数料引き下げなどの対策が考えられる。これに対しEUなど海外では、インターチェンジフィー(クレジットカードでの決済があった際に、アクワイアラー(お店と契約する決済会社)がイシュアー(利用者と契約する決済会社)に支払う手数料のこと)の上限規制を導入するなどして中小店舗の決済手数料を抑えるなどの政策的配慮がなされている。

 同様の文脈で、今回の検討会でも以下の「キャッシュレス決済事業者の中小店舗向け開示ガイドライン案」の骨子が公開された。


(1)中小店舗に適用している決済手数料

  • 決済手数料の上限と下限の幅、あるいは、標準料率、及び、決済手数料の設定方法

  • 今後の手数料変更の可能性がある場合にはその旨及び変更が行われる条件

  • 現在の日本の決済インフラ・コスト構造を踏まえると現行の決済手数料が不当に高いとは言えない。決済事業者と店舗間でコスト構造に関する認識を共有することも重要。

(2)決済手数料以外に発生する費用

(3)入金に関する条件

  • 入金の頻度や入金手数料の負担者及びその額、特別な条件による入金が行われる条件と費用

  • 一定の条件下で加盟店への入金を停止したりなどする可能性がある場合には、その旨及び条件

(4)その他中小店舗が決済事業者を選択するに当たって有益と思われる情報 (ア)中小店舗向けの訴求点 (イ)対面・非対面(オンライン)の別 (ウ)その他(対応可能なブランド/サービス、サービス提供エリア、対応可能な決済端末 の種類)


政府は、ポイント還元事業の実施中、決済事業者に対し中小店舗向けに開示・公表するよう促していたが、先述したように今後もこの領域の透明性に関して中小店舗からの不安は解消されないとみて、上記のようなガイドラインでソフトローアプローチによって開示を促してく見込みだ。

 他方、今般のポイント還元事業期間に政府に蓄積された決済情報も今後半年余りの期間をかけて公開されることになっている。これらのデータを活用し、キャッシュレス社会の実現に向け、自治体や店舗がさらなる取り組みができることを期待している。話は変わるが、コロナウィルスをめぐる一連の給付金なども個人番号等と紐づいた電子ウォレットがあれば、よりスムーズな給付が執り行われていたことだろう。取り組むべき課題は山積みだが、海外の事例なども引用しながら、シームレスで便利なキャッシュレス社会の実現を望むばかりだ。